『時の流れ』
今日は友人であるブランデルグの“娘”の結婚式だった。
彼とは最初は乗り合い馬車の護衛と乗客ということで知り合った。
その後、偶然に偶然が重なり彼の命を救ったことによって後年交流を続けることになっていた。
……結局あの件のあと冒険者に戻ることが出来なくなったブランデルグは、当時人手不足だった冒険者ギルドに勤めることになり、そこで知り合った今の妻と結婚し、二男一女をもうけていた。
その娘が今日結婚した。
……彼が冒険者を辞めて30年経っていた。
「あんたはまったく変わらないな。
“フェリアちゃん”」
「元々私の方が年上なの。
フェリアちゃんなんて呼ばないで」
猫獣人であるブランデルグも人から見れば若く見える方だ。
だがさすがに20年経っても少女のままの見た目でいるオフェーリアには敵わない。
「でもあの時あんたがいなければ、今日という日は迎えられなかった。
本当にありがとう」
猫獣人の寿命は人族と比べるとかなり短い。
ブランデルグはその見かけにそぐわず、もう人生の大半を過ごしてきたのだ。
「……最近は涙もろくなって、駄目だな」
じんわりと目を潤ませて鼻をすすり始めたブランデルグは杯に注がれたエールを一気飲みした。
もうこの頃にはこの町に定住していたジニーはとうに故人となっており、ワランとパンナはパーティーが解散してからその消息は知れない。
時たまやってくるファントによると南方のある国で見かけたという話を聞いたそうだが、確かではない。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。




