『その後と出発』
「あらまぁ……」
マンドラゴラの捕食とは、植物系魔獣の常として獲物の体液を吸い取るものだと思い込んでいたオフェーリアは、マリーが文字通り頭からバリバリ食われるのを見てびっくりしてしまった。
「もうこれでは助かり様がないわね」
……どこかの誰かが仏心を出して助けないよう見届けていたのだが、この調子では足一本も残らないだろう。
そして本来マンドラゴラはとても良い素材になるのだが、この個体だけはごめんだ。
オフェーリアは自分の存在を隠そうとすることもなくその食事風景を観察していたが、対するマンドラゴラの方も気にする様子はない。
ひたすら捕食し続けていて、オフェーリアに興味を示すこともなかった。
「ぼちぼち潮時かしらね」
ゆっくりと距離をとり、触手が伸びてこない高度まで上昇すると一気にその場から去ったのだ。
10日後、オフェーリアたちはバイショーの町への旅を再開した。
ブランデルグも何とか通常の生活をできるようになり、旅にも耐えられると判断されたのだ。
しかしかつてのように冒険者を再開出来るかと問われれば、言葉を濁すしかなかった。
「ブランデルグ、あなた本当に優秀だわ。
読み書きは素地があったのもあるけど計算に関しては最早才能よね。
もし冒険者に復帰できなくても財務方としてやっていけると思うわ」
この世界、数字に強いものは貴重である。
現在冒険者であるブランデルグなら規模の大きなギルドであれば雇ってもらえるかもしれない。
「でも読み書きはもう少しね。
特に綴りはがんばりましょう」
揺れる馬車の中での書き取りは難しい。
だがブランデルグは楽しそうだ。
今年一年、お世話になりました。
新年もよろしくお願いします。
皆様、よいお年を!




