『マリーの……』
行き当たりばったりでマリーは走っている。
もう獣道ですらなく、下草が膝上まで生え茂っている。
そこをまったく考えなしで進むマリーの姿を木立の隙間越しに観察していたオフェーリアは、彼女が破滅への一直線を辿っていることに気付いていた。
「そっか〜
そう行っちゃうか〜」
もう間も無くマリーは魔獣に遭遇する。それもフォレストウルフなどの下級魔獣ではなく中級魔獣のマンドラゴラだ。
この魔獣は植物系でその場から移動はしないが触手で獲物を捕らえて捕食する肉食系魔獣だ。
移動しないので運が良ければ逃げ切れるかもしれない。だが……
「ぎゃぁーー」
絹を裂くような悲鳴が聞こえて、さらにそれが続く。
どうやらマンドラゴラの触手の一本がマリーを捕らえたようで、オフェーリアはその真上まで来て滞空した。
「あら、大変」
触手はマリーの脚を貫き頭を下にして吊り下げられている。
逃れようと暴れているのだがそのたびに激しく痛むのだろう、泣き喚いている。
「マンドラゴラの捕食の状況は見たことなかったわ。これは貴重ね」
突然聞こえてきた声に諦めかけていたマリーに希望の灯が灯った。
だがそれは瞬時に萎んでしまう。
「あんた……」
マリーは自分がこの少女に嫌われていることを自覚していたがそれでも助けを願うことをやめられない。
「お願い!助けて下さい!!」
一縷の望みをかけて呼びかけてみたが、それに対する返答は冷めた視線だけだった。
そして呼びかけに応えるように複数の触手がマリーの腹めがけていった。




