『隠れ村』
その村は森林を切り拓いて作られた、隠された村だった。
いつしか盗賊が家庭を持ち、女子供が増えた結果、洞窟などのアジトでは暮らし難くなったためそういう形になったようだ。
「なるほどねー。
こんなにこぢんまりしてたら上からでも見逃しそうだよ」
魔獣も跋扈する森と隣接しているので頑丈な防壁に囲まれているが、その中はそれほど広くない。
それは畑の類を一切持たないからでもあって、彼らにとって食料は外で買ったり奪うものである。
「ふうん、大小さまざまな建物が30ほど……
おそらくはその【誘拐屋】というので糧のほとんどを得ているのでしょうね。
厩はうまく隠しているみたい」
宙に浮いたオフェーリアは上空からしみじみと観察していた。
その下では、誰も上に人がいるとは思わないわけで子供が駆け回っていたりする。
「とりあえず場所だけチェックして、あとはジニーに任せるかな」
帰りは私道を探りながらいくことにする。
低空で飛びながら隠された道を探していくと、村から少し離れたところで騒ぎが起きていることに気づいた。
「? 何かしら」
森の奥から甲高い悲鳴が聞こえてくる。
間違いない、女子の悲鳴だ。
オフェーリアがふわりふわりと聞こえてきた方向へ向かうと、そこには数人の盗賊に囲まれた貧相な少女がいた。
「あれはたしか……」
今まですっかり忘れていたが、そういえばあの馬車にはクソガキが乗っていた。
アレが騒動の中心なのだろう。
「ぎゃーっ、助けてー」
それはオフェーリアに向かって言っているわけではないが、切羽詰まって喚いているようだ。
どういうことなのか様子を見ていると、どうやら脱走したマリーを男たちが追ってきたようだ。




