『ブランデルグ2』
回復を促すために飲ませていた薬湯を止めると、目覚めていることが多くなったブランデルグは暇を持て余していた。
「じゃあ何か本でも読んでみる?
あまり根を詰めても困るから、軽い読み物がいいかしらね」
そう言って渡された、紀行文をまとめた小冊子を前にブランデルグは固まっている。
「どうしたの?」
「……俺、読み書き苦手って言うか、ほとんど出来ないんだけど」
「ええっ!?」
びっくりである。
「それでどうやって冒険者をしているの?」
「ん〜と、まああれだ。
冒険者ってやつは自分の名前が読み書き出来て、あといくつかの文が読めて書ければやっていけるんだよ。
それに最近はそういうのはジニーがしてたし……」
「ふうん、そんなもんなんだ」
確かに、中大陸でもそうだったが平民の識字率は決して高くない。
まだ町に住んでいる者は子供の頃教会などで行われている学舎に通う機会があるが、農村出身者などはぐんと低くなる。
おしなべて冒険者とは田舎から一旗あげようとやってきたものが多い。
そういった連中の識字率は推して知るべし、なのだ。
「じゃあさ、教えてあげるからやってみない?
まだしばらくは動けないし退屈でしょ?」
いつもならそんなことは面倒くさいと拒否するところだが思うところがあったのだろう。
「そうだな、お願いしようかな。
いや、お願いします」
「はい、じゃあ……」
ここからオフェーリアによる、ブランデルグへの授業が始まった。
それでわかったことだが驚くことに彼の計算能力はそれなりに高かったのだ。
聞けば冒険者にまず必要なのは計算能力であって、これがなければ素材の売買の時に誤魔化されて損をすることが多いからだそうだ。
「必要に応じてそうなった、と」
オフェーリアは何とも言えない表情をしていた。
 




