『準備』
オフェーリアの店舗はその床面積から、上から3つ目の等級【第3級】となった。
この等級の登録料は金貨30枚。
もちろんオフェーリアにとっては何の問題もない。
契約書を作成し、支払いをして、これでいつでもオープン出来るのだが、ジルの話によるとこの店を利用するのはそれなりに裕福な女性たちになるだろうとの言う事。
なのでオフェーリアは“目玉商品”を考えていた。
「これは一度都に戻った方が良いわね。
色々仕入れてこようっと」
オフェーリアが転移に選んだ場所は、例の宿泊施設だったはずだが、なぜかそこには教官が立っていた。
「お帰りなさい。
どう?うまくやってる?」
にこやかだが何かものを言わせない、そんな雰囲気を漂わせている彼女は腕を組んだまま近づいてきた。
「はい、でもあの……課題は」
「この短い期間にそんなの期待してないわ。
で、今日はどうしたのかしら?」
オフェーリアはかくかくしかじかとラバナラで雑貨屋を開くことになった話をした。
「ふうん、いいんじゃない。
ただ、ここから持っていく商品は選ばないとね。
どんなものを考えているの?」
「えっと、ですね」
オフェーリアは富裕層向けの、ちょっとお洒落な品揃えを考えていると言った。
「じゃあ、アレも置いたらどうかしら?」
教官はオフェーリアの耳元で、ささやくようにある品の名を言った。
「えっ?いいんですか、それ……」
「問題ないわ。
よしんば解析して複製しようとしても、原材料はこの都の近辺でしか採取できないのよ。
精製にはかなりの魔力を必要とするし、そりゃあいずれ近いものは出てくるでしょう。
でもね、こうしたら良いと思うの」
いかに引きこもりの魔法族とはいえ、オフェーリアとは比べ物にならないくらい時を重ねてきた教官である。
付加価値の付け方などいくらでも思いつける。
教官はこの後、オフェーリアを自宅に泊めることにすると、ふたり連れ立ってあちこち回ることになった。
3日後、魔法族の都とその周辺で仕入れた商品とその原材料を異空間に収納しラバナラの家に戻って来たオフェーリアは、まるで見張っていたかのようなジルの突撃を受けてびっくりしてしまった。
「フェリア様、この数日間一体何をなさっていたのですか?」
とりあえずオフェーリアは、ジルを店内に招き入れて、再び鍵を掛ける。
「ちょっと商品の調達にね。
そうそう、オープン時の客寄せだけど、どうすればいいかしら?」
「本来の対象者には商業ギルドから通知致します。
あとは一般の冷やかしですが、ギルドの職員を派遣して入場制限しますわ。
基本、初回は招待状の提示を求めることにしました」
何とものものしい。