『治療1』
「さて、ちょっと外に出てくるからブランデルグは大人しくしていてね」
オフェーリアがゲルを出ると、何だ何だと男たちがついてくる。
「馬車と馬、そしてゲルを結界で囲むだけだよ。
ふうん、このくらいあればもうひと張り出せるかな」
ジニーやファントたちが頑張って木を切ったり下草を刈ったりしたのでそれなりの空き地が出来ている。
そこにもうひとつゲルを出して皆が自由に使えるようにする。
そこと馬車の客車に魔導ストーブを出して、次は周りに結界石を置いていった。
「これでひと安心かな。
今夜は皆は馬車とゲルに分かれて寝てちょうだい。
私はブランデルグに付いているわ」
「フェリアちゃん、何から何まで世話になって……本当にすまない」
ジニーが頭を下げると一緒にいたワランが続いて頭を下げた。
「そんな大層な。
でも間に合ってよかった」
それは奇跡以外の何ものでもない。
ジニーとすれば今でも信じられないほどだ。
「明日は皆もゆっくりしたらいいわ。
ひょっとしたらもう少し空き地を広げてもらうかもしれないけど」
「それは……」
「そう、それなりに回復するまで動かさない方がいいと思う。
……見た目は元気そうに見えるけど、中身はボロボロよ」
ジニーとワランの顔つきが引き締まった。
「これを吸い込むのか?」
ブランデルグの手には湯気の立つ碗があって、おっかなびっくり覗き込んでいる。
「そうよ。吸い込むことによって直接肺に薬を届けるの」
夜半になって咳き込み出したブランデルグに肺炎を抑える薬を処方した。
おそらくこれから熱も上るだろう。
予定していた増血剤のほかに解熱剤も出さなければならない。
「解熱剤はハーブを使うわ。
なので効きは穏やかだけど身体への負担は少ないから」
解熱鎮痛薬の原材料は一歩間違えれば毒となる。
特に多種類の薬を飲む時の飲み合わせには気をつけなければならない。




