『真相』
「ゆっくり、ゆっくり食べなきゃだめだよ」
まともに食べていなかった胃腸が食欲を促す匂いに刺激されて急に空腹感に襲われたのだろう。
ブランデルグは猫舌であるにもかかわらず、一気に掻き込もうとする。
「じっくり食べないとアーンしちゃうぞ」
再び窘められて、ブランデルグはそれもよいと思ってしまった。
そんなおちゃらけた考えが浮かんでくる、それほど回復してきていたのだ。
そして口にしたパンがゆは今まで食べたことがないと思うほど美味かった。
「さて、そろそろ何があったか話してもらえるか?」
ブランデルグが何とかスープ皿一杯のパンがゆを食べ終わってスプーンを置くと、ジニーが話しかけてきた。
「……ローニンに刺された。
後ろからズバッと。俺が意識を失う直前に見たのは自分の胸から生えている剣の切っ先だったよ。
それ以外は何もわからない」
「ローニンか」
ジニーは考え込んでいる。
かわりにパンナが話しかけた。
「馬車が次の村に到着していないんだ。
2日遅れて出発した俺たちが先に着いて、捜索に引き返して来たんだが、痕跡が発見出来ない」
「そうか、おそらく誘拐だろうが、俺は屋根の上にいたんでな」
「まあブランデルグが無事(?)だったのだから、そっちのことは急がないでしょう?」
オフェーリアは向こうの馬車の客の安否に興味はない。
手が空けば捜索に行ってもよいが、その程度だ。
今はブランデルグの体調を戻すことが先決だった。
「見た目は元気そうだけど、かなりの量の血を失っているのよ。
内臓にも負担がかかっているの。
なので数日はここから動かせないのを承知してもらうわよ」
「俺はどうして生きているんだろう」
そのときポツリと、ブランデルグが呟いた。
「たぶん、馬車から落ちた時にポーション瓶が割れて、たまたま傷口にかかったのでしょう。
それから水代わりに飲んでいたのもよかったわ。
……本当に、今から思い返せばあの時渡しておいてよかった」
試供品として渡したポーション5本と水筒の水だけで生き抜いた生命力は、さすが獣人といったところか。




