『覚醒』
「少し狭いけど皆、中に入って」
今回も結界を張り、今は全員がゲルの中に入ってきている。
「ここは暖かいな」
日が暮れて外は氷点下に近くなっている。
そんなところに放置のままでは何の罰ゲームかと言われてしまう。
「食事は以前から保管してあったものになるけど……」
それでも取り出された鍋には柔らかく煮込まれたミノタウルスの煮込み肉が入っていた。
これは拳大の肉が甘辛く煮つけられていて、フォークを入れるだけでホロホロと崩れてしまう。
付け合せはマッシュポテトだ。
あとは根菜の炒め煮が取り出されて、男たちに供された。
「フェリアちゃん、悪いな」
経口摂取したポーションがうまいこと効いてくれたのだろう。
ブランデルグの容態は安定している。
だが未だ意識は戻らず、食事もままならない状態で出発することは出来なかった。
「大丈夫、ブランデルグは助かるわよ。
ただちょっと身体が休みを欲しがっているだけ。
私としては早く目を覚ましてちゃんと食事をして欲しいのだけど。
ポーションで命を繋いでるようじゃ、ちょっと」
最後は苦笑いだ。
「ここはあの世とやらか?」
「残念ながら違うわよ。
……よかった、食事の支度をするわね」
ブランデルグの、今はまだ狭い視野に入ってきたのはフェリアだ。
「俺はいつから……いや、何があった?」
「うん、それもあとでね。
とりあえずこれを飲んで」
そう言って渡されたのは湯冷ましだ。
彼の身体には食べ物もだが、絶対的に水分が足りない。
「お腹減ったでしょ?
何か消化のいいものを作るね」
手早くミルクがゆを作るとブランデルグの目の色が変わった。
ミルクを温める匂いを嗅いでようやく食欲が戻ってきたようだ。




