『捜索』
普通よりもかなり飛ばしてオフェーリアたちの馬車は、その段階では気づいていなかったが凶行が行われた場所に差し掛かっていた。
その時“それ”を見つけたのは身体強化を付与したオフェーリアだった。
「ちょっと待って。
馬車の速度を落としてちょうだい」
風にのって微かに漂うのは血の臭いだ。
「ここからは歩いて行くわ」
いつものように馬車の屋根の上にいたオフェーリアが身軽に飛び降りて、小走りで進んでいく。
それに続いたワニンがほぼ同時に声を上げた。
「ああ、あれは……」
「おい!」
街道の両側は森で、すぐ側から藪になっている。
その藪が不自然に乱れているところから手の先が覗いていた。
それはまるで、もう死者である彼の最後の執念であるようだった。
「これは……
こういう事有りきで、よほど気をつけて見ていかないと分からなかったな」
少し遅れて追いついたジニーがしみじみと呟いた。
ファントが藪から引っ張り出した彼、それはそれほど交流していなかった小役人の助手だ。
「これは、何かあったの確定だな」
「ああ、ブランが上手くやってればいいが」
そんななかオフェーリアは嫌な予感に襲われていた。
なので【飛行】を使って慎重に藪、そして近辺の森まで捜索して……血臭に気がついた。
「みんな、こっち!」
冒険者の中で一番嗅覚のよいパンナが走り出した。
その血の臭いは先ほどの助手のものとは明らかに違っている。
そして背の高い草が生えた場所、それが不自然に倒れた先の木にもたれた、見慣れた姿があった。
「ブラン!」
まだ、さっきの助手のような死の匂いはしていない。
パンナとほぼ同時に着いたオフェーリアは、抱き起こそうとするパンナを制して傍に取り付いた。
「……生きてる。奇跡だわ。
でもかなり拙い状態よ」




