『結界石』
「フェリアちゃんの作る飯はいつも美味いな」
パスタスープの他に以前に揚げてストックしておいたオークの一口カツを出すと男たちに一斉に群がれてしまった。
都特産の揚げ物に合うソースをかけてやると涙ぐんでいるものもいる。
「明日からも大変だからたくさん食べて、ぐっすり寝て。
今夜は結界を張るので見張りはいらないわよ」
「フェリアちゃん、それは……」
「魔導具を使うわ。
いくらなんでも私が何もかもやるわけじゃないわ」
「そんな魔導具があるのか」
オフェーリアはこの旅で、個人的には使っていたが皆の目につくところでは使っていなかった“結界石”を取り出した。
「これは石に魔力を付与してあるから魔力のない人たちでも使えるわよ。
でも燃費は良くないわね」
「ほう、こんなものが」
結界石を手に取ってくるくると回しながら目を近づけて見ていたファントが信じられなそうだ。
何しろ見た目は普通の石と変わらない。
そんなファントの疑念を晴らすため、オフェーリアは実験をすることにした。
「じゃあ、中に入りたい人!」
嬉しそうに手を挙げて立ち上がったのはパンナだ。
「ではやってみるわね。
じゃあパンナ、この椅子に座ってくれる?」
皆で集まって夕食を食べているテーブルから離して椅子を出し、パンナを誘う。
そして彼とともに結界の中になる場所にはいると半径1mほど離して結界石を置いていき、最後のひとつを置いたところで結界が完了した。
「では誰か攻撃してみて」
「よしよし、その仕事は俺のもんだ。
どれどれ……」
いきなり振りかぶったファントの剣が思い切り振り下ろされた。
結界内のパンナも自身の得物を構えて攻撃を受けようとしている。
だが。
「うおっ!」
ファントの渾身の一撃は見えない壁に阻まれ弾かれてしまう。
彼は手首を痛めないように、瞬間剣を手放していた。
「痛っー、硬ったいわー、これ」




