『困惑』
慣れた様子で野営を終えて、オフェーリアの作った朝食をたっぷり食べて一行は出発した。
そして昼過ぎに到着した村で“今年最初の乗り合い馬車”と歓迎されたことで風向きが変わった。
「どうしたの?」
顔見知りの村人の何人かと言葉を交わしてきた御者の顔色が悪い。
「……ここは野営地から近すぎて旅人が泊まる事はまずない。
だがそれゆえに補給には必ず立ち寄る村なんだ。
それなのに来てないとは……」
ハズレ→バイショーの護衛依頼を何度も行ったことのあるジニーたちが御者の元に集まってきた。
彼らは水の補給を行なっていたのだが、御者の動揺した様子を見て中断してきたのだ。
「先行の馬車に何かあったのか?」
仲間がいるのだ。他人事ではない。
「断定したわけじゃない。
だが2日も先行していたはずの馬車が来てないとは……何かあったのかもしれない」
「この街道はほぼ一本道だぜ?
道を間違えるのは無理があると思うが」
確かに数本、脇道への分かれ道があるにはあるが、見るからに道の幅が違うそちらに行くとは、故意でない限りあり得ないのだ。
「フェリアちゃん、あんたさえ良ければ少し戻ってみたい。
ひょっとしたら何かあって立ち往生してるのかもしれない」
乗客であるオフェーリアを慮って言い切れない御者のかわりに、必死の形相のジニーが言った。
もちろんオフェーリアに否やはない。
「もちろんよ!
補給が済んだら戻りましょう!」
この時オフェーリアは、単に道を間違えてそのあと何かのアクシデントに見舞われて立ち往生しているのだと信じて疑わなかった。




