『真実』
「よう、ローニン。
上の奴は片付けたのか?」
「もちろん。
それよりベンジー、馬車を汚すのは感心しないな」
乾いた笑いとともに仕込み杖にしまった刃に付いた血は、横で固まっている小役人の服で拭き取って鞘に収めた。
この遣り取りをみて状況を把握できないものはいないだろう。
「おまえら、最初から!」
絞り出すように言った商人の顔をみて、行商人改めベンジーは薄ら笑いを浮かべ言った。
「その通り!
いやあ、今回は最初から苦労したぜ。
俺っち潜入は久しぶりだったしさ、ボロが出ないかヒヤヒヤでさ!」
何と言うかキャラが違う。
このベンジーという男はかなり猫を被っていたようだ。
「もうこれ以上人質に傷をつけるんじゃないぞ。
この3人はいい金蔓なんだから」
そう、この3人には十分ベンジーの実力が見せつけていた。
なのですでに剣は鞘である杖に収められていたがローニンに大人しく縛られている。
「おまえら山賊か?!」
「山賊だって!
俺たち、そんなダッサいもんじゃないよなぁ。
ベンジー何とか言ってやれ」
「“深い霧山の峰々”と言う盗賊団の話を聞いたことはないか?
粋で上品な仕事をする、俺らのことだ!」
小役人の耳にはまだ入っていなかったようだが、さすがはそれなりの商会の主人である2人は知っていたようだ。
サッと顔色が悪くなる。
「おっ!こっちのおふたりさんは俺たちのことご存知みたい。
ねっ、ねぇ、どんなふうに噂されてるの?」
「……どちらかと言うと誘拐して身代金を取ることを主にしている盗賊団。
皆殺し云々というような仕事はしない」
「おー!そのとーり!
よくわかってるじゃん、俺たち良い盗賊団だから!」
よく言う。
家族や勤め先から身代金を取って、酷い時にはそのまま奴隷商に売るような連中だ。
「あんたたちのとこからはどれくらい奪れるかな
こっちの役人さんは貴族じゃないのが残念ー」
ベンジーのふざけた態度が反面、恐怖を沸き起こさせる。




