『再開された馬車の旅』
結局、あちらの馬車に移るのは斥候職のブランデルグに決まった。
「向こうはバリバリの戦闘職2人だし、俺みたいのがいた方がいいと思うわ。
まあ、ほんの数日の事だし、せっかくまたフェリアちゃんの料理を食べられると思ったんだが……
そうだ!バイショーに着いたら打ち上げの宴会しない?」
「うん、いいね。
じゃあ、先にあっちで待っててね」
そうして別れた朝は何日かぶりに雨が上がり、晴れてこそいないが川のようになっていた道から水が引きはじめていた。
「このまま雨が止めばこちらもあと2日ほどで出発出来そうだが、どうかな」
何とかあと少しで旅が再開出来そうだ。
煩いマリーもいなくなりようやくゆっくりすることができる。
今日はこの後、都に転移して食材を仕入れてくるつもりだ。
出発すればバイショーまで5〜6日といったところで、そのほとんどすべてが野営になるそうだ。
前日、宿屋の主人と御者が話していた通り、街道は若干のぬかるみを残しているが、馬車の運行には問題ないようだ。
オフェーリアたちはサービスで作ってくれた弁当をもらって乗り合い馬車に乗り込んだ。
「まあ、結局最初の面子になったな」
ブランデルグはいないがあとはハズレから出発した時と同じメンバーだ。
幸い盗まれた馬はこの乗り合い馬車の馬ではなかったのですぐに出発できたのだが、不幸にも被害に遭った馬の持ち主は今も憲兵隊との聴取の最中だ。
「乗り合い馬車屋さんも儲かっているのかどうか……何か、微妙?」
「積荷が無事だったので儲けはありますよ。
乗客は減りましたが返金は受け付けてませんからね」
「なるほどね〜」
ブランデルグが新しく護衛に着いた馬車は普通の中型馬車だった。
乗客は向かい合わせに最高6人までしか乗れず、護衛はひとりが御者台に、ひとりは後部のデッキに、そしてブランデルグは屋根の上にいた。
「もうすぐ中継地だ。
少し早いが昼休憩にしよう」
代わり映えのしない景色に魔獣すら出てこない長閑な時。
それが突然破られることになるとは、ブランデルグは思いもよらなかった。




