『分かれ道』
結局マリーはバイショーに連れて行って売ることになった。
この年齢ゆえ、それほどの値はつかないだろうが母親似の美人顔なので奇特な変態が値を釣り上げるかもしれない。
それを期待してわざわざバイショーまで連れて行くことになったのだ。
だが、もうオフェーリアの手を離れているので関係ない事だ。
マリーは今縄をかけられ、猿轡を嵌められて納屋に放り込まれていた。
「ちょっといいだろうか?」
その日の夕刻、食堂での夕食にオフェーリアの乗る乗り合い馬車の乗客、乗員、そして護衛の冒険者たち全員と他の泊まり客たちが集まる中、2人連れ商人の片方が話し始めた。
「村の年寄りや御者が言うには、明日には雨が小降りになるらしい。
それでだ。
ぬかるんだ道は大型の乗り合い馬車にはまだ無理だが、小型ならなんとかなると言うので交渉して一台借りることができた。
もちろん個人的なものなので割り高だが数日は早くバイショーに到着できるだろう。
どうだ?
あと数人乗ることができる。
それと護衛が足りなくて、何とか1人か2人頼めないだろうか?」
この手の話はよくあることだ。
ただ支払済みの乗り合い馬車の運賃は返却されることはなく、完全に時間の節約を狙ったものである。
「私はこのまま残らせてもらうわ」
オフェーリアは一番に自分の意思を伝えた。
元々急ぐ旅ではないし、あの親子に苛立っていたがそれもなくなったのだ。
今のところ新たに仕立てられた小型の馬車に乗るのは2人連れと行商の男、そして外にくくりつけられた樽の中にマリーを入れていく。
2頭立ての馬車に御者は雇えたが、護衛はメビチとローニンの2人で商人たちはもう少し護衛が欲しいらしい。
この新しい馬車に、同じ宿屋で足留めされていた地方の小役人とその助手が加わり、あとはやはりどこから誰を出すかの話になっていった。
 




