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『ジル来訪』

 ラバナラの町も膝くらいの積雪があり、町のあちこちで除雪が行われていた。

 オフェーリアも自分の家の前だけ雪かきをすると、汗ばんだ身体を拭きに2階に上がっていった。


「フェリアさん!フェリアさーん!

 いらっしゃいませんかー!」


 ジルである。

 彼女はまさか、オフェーリアが森に行っている何て夢にも思わず、毎日午前と午後の2回日参していた。


「はーい、今下りていきますー」


 2階の窓から顔を出したオフェーリアが、ジルの呼びかけに返事をした。

 そしてしばらくすると玄関の鍵が開く音がし、扉が開かれた。


「いらっしゃい!」


「こんにちは。

 急にお邪魔してすみません」


「ちょうどお茶にしようと思っていたの。一緒にいかが?」


 ジルは嬉しそうに頷いた。

 雪かきをしていて汗をかいたオフェーリアと違って、ジルは芯から冷えついている。

 外套を脱ぎながら暖炉の側に移動したジルは、暖炉では薪が燃えているのではなくてストーブが置いてあるのに気がついた。


「ああ、魔導ストーブは初めて?

 これは火を燃やさないので空気が汚れないのよ。

 それにこんなのでもしっかり暖まるしね」


 1階の店舗だったスペースは、フカフカの絨毯が敷きつめられ、薄ピンクの花柄のカーテンに合った瀟洒な女性向けの家具が配置されている。

 白を基調とした猫足の家具はどちらかというとさほど重々しくなく、オフェーリアの年齢に合っていると言えるだろう。

 そこにジルを誘った。


 奥にある、簡易キッチンでお茶を淹れたオフェーリアは都から持ってきた“磁器”のティーカップに注いでジルの前に出した。

 お茶請けはソフトクッキーである。


「で、何のご用でした?」


 夢中になってクッキーを食べていたジルは、ハッと我に返った。

 初めて食べる食感のクッキーも、完璧な技術で淹れた紅茶もとても美味しくて、ここにきた本来の目的を忘れてしまいそうになっていた。

 ジルはティーセットをテーブルに置き、口の中のものを飲み込んだ。


「そうでした。

 実はここ数日、商業ギルドにある問い合わせが多数きておりまして……それがこちらに関するものでして」


「商業ギルドに?

 うちは何も商売してないわよ。

 第一、もし私がここで商業するとしたらギルドにそれ専用の登録をしなきゃならないでしょ?」


 うろ覚えだがそのようなシステムがあったはずだとオフェーリアは思い、思い出そうとしていた。


「はい、店舗を持って販売する場合は“株”を持っていただきます。

 これは店舗の種類、大きさなどによって変わってきますが、フェリア様の場合3等級となります」


「“株”の件は置いておいて、一体何を売るって言うの?」


 ジルはそこで大袈裟に溜め息をついた。


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