『仮の家探し』
オフェーリアがラバナラに居ついて(厳格に言えば居住地は森の中だが)そろそろひと月が経つ。
すでに季節は秋に入り、朝晩はそれなりに冷え込み、昼の間も涼しくなってきておりすでに実りの秋を迎えていた。
森の中は美味しそうに色づいた果実でいっぱいで、オフェーリアは大喜びで採取していく(彼女は【浮遊】の魔法が使えるので高所も問題ない)
この状況で、オフェーリアはこのラバナラ(付近?)で冬を越すことに決めたのだ。
「小さくてよいので貸家を探しているのですが、どこか心当たりはないですか?」
突然のオフェーリアの言葉に、ジルはびっくりしたものだが徐々に喜びが込み上げてきた。
「では是非、当家の部屋をお使い下さい」
目を輝かせて迫ってくるジルには悪いのだが、それでは意味がない。
オフェーリアは貸家の部屋と森の家を繋ごうとしているのだ。
もちろんそのための魔法は習得済みだ。
「う〜ん、本当に小さくていいから一戸建ての方がいいのよ。
その方がジルさんたちと長くお付き合いできると思うの」
「では当家の離れを」
「それじゃあ、意味がないんだな。
……町中の一軒家、この条件がクリア出来ないなら、私はこの町を離れなければならなくなる」
この“脅し”はよく効いたようだ。
ジルは商業ギルドに所属している不動産屋を紹介してくれた。
ご丁寧にも同伴してくれたジルは、オフェーリアよりも先に物件の査定を始めてしまう。
「フェリアさん、あまりに町外れでは治安がよろしくないので、こちらの物件はバツです」
机の上を滑らせて幾つかの書類が外れていった。
「あとはこの中から中表通りの店舗兼の物件にするか、もうひとつ中に入った民家の多い場所の物件にするかですね」
ジルは書類をまとめ内見に行こうと席を立った。
慌てて、本来説明すべき店主が奥に入り鍵束を持って来る。
そして足早にオフェーリアとジルの後を追った。
「ところで、留守がちの場合、店舗付きとそうでない物件のどちらが目立ちませんか?」
「これは意外に思われるかもしれませんが、通りに面した店舗付き住居の方が安全でしょう。
それはたとえ留守にして店舗が閉まっていたとしても、前を通る人の目があるためです」
なるほど、とオフェーリアは頷いた。
そして店舗付き住宅2件に絞り、まずはその一件に足を向けた。
「外見はどちらも比較的新しいのね。
店舗はおまけだからそれほど拘らないの。広さもね。
住居はこぢんまりしていて、冬が越せればいいのだから」
ほとんどを森のウッドハウスで過ごすつもりなので、形だけでよいのだ。