『交渉……?』
オフェーリアは元々ギルドで購入していた地図を取り出し、ゲルルートに見せた。
「階段に向かう道から外れたホールのような場所、ここにあった洞穴にこれは居たの。
とりあえず、いくつかあった穴はすべて確認してきたわ。
……そのうちの一ヶ所には巣穴があって、卵があったの」
ゲルルートは息を呑んだ。
「ここで言っておくけど、今回の獲物はすべて売る気はありません。
将来、故郷に帰る時に土産にしようと思っているので」
今度は目に見えて落胆している。
「さて、今一番の問題は、コレです」
オフェーリアがローブのポケットから慎重に取り出したのは、例の仔鰐だ。
ゲルルートがよく見ようと覗き込んだところパチリと目を開けたので、びっくりして尻もちをついてしまった。
「フェリアさん、これ!!」
「うん、ちょうど孵化に立ち会っちゃったのよね。
ねぇ、この子を従魔にしたいのだけど可能かな?
可能だよね?手続きしてくれるよね?」
笑顔で迫ってくるオフェーリアが怖い。
ゲルルートは生まれて初めて美少女の笑みがこれほど怖いものだと思い知った。
「じゅ、従魔か?
……確かにそういう存在はいるし、従魔士という職種もあるが、最近は聞かないし、この王都でも滅多に見ないな」
「細かいことはどうでもいいの。
私はこのピピちゃんを合法的に飼育したいだけ」
すでになんとも似合わない名前を付けて“うちの子”にしてしまっている豪胆さに呆れるべきなのか、驚くべきなのか、ゲルルートはもう何がなんだかわからなくなっていた。