『申告』
兵士2人のもとからギルド出張所に向かったオフェーリアは、それなりに賑わっている室内で、顔見知りの職員を探した。
だが残念なことに彼らは勤務時間外だったようだ。
仕方なしにオフェーリアは街中に戻り、王都の冒険者ギルド、ルバングル王国本部にやってきた。
「あ、ゲルルートさん」
このギルド本部に来る冒険者は何もダンジョン行に限ったわけではなくて、王都の外、近隣の森や遠方だが鉱山地帯の依頼も取り扱っているのでそれ目当ての連中でも賑わっている。
そんななか、忙しく立ち働いているゲルルートに近づくとその耳許で囁いた。
「本当ですか?」
驚きに目を見開いたゲルルートは思わずオフェーリアの腕を掴んでいた。
だが紫色の瞳に睨みつけられて慌てて離した彼は、改めてオフェーリアの手を取ると引っ張るようにして奥の部屋に向かっていった。
「それは確かか?確かなんだな?」
ちょうど誰も使っていなかった訓練場に連れ込まれて、そこでようやく解放された。
これはここで見せてみろと言われているのだと思ったオフェーリアは、何の前振りもなしに今日の獲物を取り出した。
【クロコダイラワニン】
巨大な鰐の骸がドンと姿を現した。
その巨体にびっくりして飛び退ったゲルルートは信じられないものを見たといった様子で近づいてくる。
「こいつは……確かにワニだな」
「私の故郷の大陸では絶滅して久しいのだけど、こちらでは珍しくないのかしら?」
そんなことはない、と即座に否定したゲルルートだったが、たしかにこのダンジョンで今まで”ワニ”が見かけられたことはなかった。