『うちの子ゲット?』
思わず、といった様子で触れてしまった仔鰐は、オフェーリアのことを親とでも思ったかさらに鼻面を押しつけてくる。
だがオフェーリアはそんなことよりも、胴体に巻き付いた尻尾の観察に夢中だ。
「これは困ったことになっていますよ」
普通、卵の中に収まっている時にはこれに近い状態で尻尾は丸まっているものなのだが、この仔鰐の場合はそれが胴体に巻き付いてしまい、何かの原因でそのまま骨が固まってしまったようだ。
少し触れてみたところ痛がる素振りを見せたので無理に外すのは諦めた。
「この仔はもう野生では暮らしていけないわね。
と、言うか成長したら危険な魔獣になる【クロコダイラワニン】をこのまま放っておくつもりはないけど」
一応、噛まれないよう、裂いたハンカチで上下の顎が開かないように結ぶとローブの内ポケットに入れて、他の洞穴の確認に戻る。
仔鰐はまた卵の中と同じような環境に落ち着くのか、大人しく運ばれていた。
結局、昼時をはさんでほぼ丸一日を洞穴探検に費やしたオフェーリアは、目に見える成果はほとんど無しで入り口に戻って来た。
ちなみに、あの場にいた成獣のクロコダイラワニンはあの一頭だけだったようで、卵があったのもあそこだけだった。
「ずいぶん遅かったな。
どこまで潜ってきたんだ?」
兵士がオフェーリアの顔を見て、あからさまにホッとした表情を浮かべる。
「今日はずっと3階層にいたの。
ちょっと報告する事があるんだけど……
ここの出張所でいいのか、それとも王都支部がいいかしら」
2人の兵士は互いの顔を見合わせた。
「何か大事か?」
「うう〜ん、ちょっとここでは」
この時兵士たちは、例の2人の冒険者の付き纏いかと思ったが、本当はある意味もっと大事だった。