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『孵化』

「これは……卵?」


 警戒しながら洞穴の奥に進んでいくと、壁面の所々に生える碧光苔に照らされて、地面を浅く掘った中に数個の卵があった。

 それは巨大な成獣に比べると頼りないほど小さいが、それでもオフェーリアの頭ほどある。

 それが6個。


「卵か。

 これはおそらく……問題ないわね」


 オフェーリアの異空間魔法のレベルでは生き物を異空間に収納することはできない。

 だが鳥などの卵だけは“生き物”と分類されないのか、問題なく収納できていた。

 そうして慎重にひとつづつ異空間に送っていた4個目、オフェーリアが触れようとするとゴソリと動き、その表面に一筋、ヒビが入った。


「あら?これは……」


 ピシピシと音をたててヒビが広がっていく。

 そうして小さな穴が開き、見覚えのある鰐のミニチュアのような鼻面が突き出した。


「生まれちゃった?」


 ピューピューと呼吸のような鳴き声のような音を立てて、ゆっくりと穴を広げて頭を出したのは小さな小さな鰐の仔だ。


「困ったな」


 こうなると異空間に収納することができない。

 オフェーリアは慌てて残りの卵を仕舞うと、まだ完全に卵の中から抜け出せない仔鰐を観察していた。


「ピ、ピピッ、ピー」


 中で絡まっているのか苦しそうにもがいている。

 このような場合、手を出さないのが定石なのだがオフェーリアは思わず手助けしていた。


 差し伸べた指が慎重に少しずつ殻を割っていく。

 すると仔鰐の鼻面が恐る恐る触れてきて、ピピと鳴いた。


「うん、結構硬いね」


 鶏卵のように脆いものではない。

 両手でクッキーを割るような感じで殻を取り除いていくと徐々に中が見えてきた。


「あ〜

 うん、これは拙いわ」


 全長は20cmほどだが尻尾が体に巻きついている。

 これはたまにあることなのだが、問題は骨がその形に固定してしまっていることだ。


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