『鰐ークロコダイラワニン』
「生きて動いているのは初めて見たわ〜」
のそりのそりと、洞穴から出てきた“それ”は完全にオフェーリアを獲物として捉えたようだ。
「クロコダイラワニン。
生け捕りにしたいけど、これは無理ね」
パッと見たところ5mはありそうだ。
ここは諦めて、素材として持ち帰ることにする。
「蛇ではないけど、血も素材になるかもしれないわね」
オフェーリアが色々考えていると、ようやく穴から全身が現れた。
「鰐……
向こうの大陸では古の生物だけど、こちらではまだ生きているのね」
尻尾を含むと8m強。
頭部だけでオフェーリアの身長ほどもある巨大な鰐、クロコダイラワニン。
それが口を半開きにして戦闘形態をとり、オフェーリアを睨んでいる。
「こんなのがここにいるなんて、きっと誰も知らないのね。
でも大丈夫、この私が素材にしてあげるわ」
巣穴である洞穴から這い出したクロコダイラワニンが、その短い手足を使って、びっくりするような速度でオフェーリアの方に向かってくる。
その獲物に、慎重に【結界】で包むと同時に【真空】をかけて空気を奪った。
この組み合わせは、呼吸を必要とする生物にとっては最悪だ。
さすがに巨大な鰐が窒息死するまで小一刻かかったが、無事素材として手に入れることができて満足する。
だがしばらくしてある懸念が湧いてきた。
「まさかこんなのがこの洞穴の中にうじゃうじゃいるんじゃないでしょうね」
オフェーリアはそこらじゅうにたくさんある洞穴に向かって【探査】して回った。
念には念を入れて、亀裂としか見えない隙間にも探査をして何ヶ所目か、どうやらあの鰐が出てきた洞穴に戻ってきたようだ。
「!?」
そこではやっぱりと言うか、反応があった。
しかしそれは少し異質だ。