『まさに“冒険者”』
3階層。
そこは件の底辺冒険者2人には限界の階層であった。
非力な彼らではサンドフォックスは手強い相手であり、今まで自力で倒せたのは一度しかない。
それも最近の戦闘で傷ついていて、襲ってくる素振りすらなかった相手だった。
「ねぇ、もう引き返した方がいいんじゃない?」
少女は先ほど3階層に足を踏み入れてから落ち着きがない。
……さもありなん、彼女はラットとしか戦ったことがないのだ。
そして今日は前回と違って襲いかかってくるラットが多かった。
その退治に時間と体力がなくなっていく。
金がなくて、前日ろくに食べていなかった2人はすでに限界に近づいていた。
「くそぉ、あいつがこんなに間を空けなければこんな目にあわなかったのに」
前回持って帰ったラットの肉で食いつないでいた2人だったが、さすがに5日間持たせることは出来なかった。
彼らには肉を保存する技術もなかったようだ。
ちょうどその頃オフェーリアは、階層の階段と階段を繋ぐ主要な道から外れた岩場にいた。
「ギルドで買った地図によると、このあたりはろくに探索していないようなのよね。
こんなところほど何かありそうで、さっきからビンビンくるわ」
すっかり本来のオフェーリアに戻って品のない言葉もポンポン飛び出してくる。
こちらに来てからの貴族暮らしにすっかりストレスを溜め込んでいたので、今日は少し暴れたい気分だ。
そこはずっと洞窟になっている浅層の中でも珍しい、広く開けたホールのような場所でなおかつガレ場だった。
そこから何本かの支道が出ていてこの先の探査は行われていないようだ。
「攻略に直接関係ないからか、ただ面倒臭かったからなのか……
うーん、ダンジョンは甘く見たらダメなんだな〜」
そしてお約束のように洞窟から這い出してくるものがいた。