『寄生』
ダンジョンに向かう冒険者は、その装備を見れば大体の力を計ることができる。
オフェーリアのように魔法を使うものはともかく、原則物理攻撃で魔獣を討伐する者たちはそのレベルにあった武器と装備でなければダンジョンを進むことが出来ないのである。
そうすると今、オフェーリアの邪魔をする様に立っている少年とその添え物のような少女は、どうにかダンジョンに入ることを許されている程度の存在なのだろう。
「何かしら?」
目にしているだけで苛立ちがこみ上げてくる存在というものがある。
現在、オフェーリアにとってのそれがこの目の前の2人であり、本能で関わり合いになりたくないと思う。
「実はこの間……あんたが残した獲物を無断でいただいちまったんだ。
悪かったよ」
この件は先ほどゲルルートから聞き及んでいる。
ハイエナ(ここでは残飯漁りと言う)はどこでもある話だが一定のルールも存在する。
「俺たち、決まりを知らなくてさ、落ちてるものは勝手に拾っていいと思ってたんだ」
どうやら謝罪をしたかったのは認めるが、まだ続きがありそうだ。
「その……ここからが頼みなんだが、あんたが倒したけどいらない魔獣をもらえないか?」
まさかの“寄生”の提案だった。
オフェーリアはそのあまりの図々しさに言葉がなく、呆気にとられてしまったが安易に認めるわけがない。
これは可能性としてゲルルートから注意されていたが、まさかと思っていたのだ。
「先日の無断で持って帰った事に関しての謝罪は受け取るわ」
「じゃあ……」
少年の表情に明るさが見える。
だがそれをバッサリと断ち切る、オフェーリアの話が続いた。
「それとこれは別よ。
毎回、私がダンジョンに潜るたびに後ろを付いて回られるなんてごめんだわ。
……話はそれだけ?
もう2度と付き纏わないで」
一度甘い顔を見せると要望がエスカレートしていく。
なのでその気がないのなら、はっきりと断るようにゲルルートからアドバイスされていた。