『厄介ごと』
思った通り、都の素材専門店で碧光苔は高額で売れた。
採取する時に分けて入れた袋ひとつで金貨500枚、平民ならひと財産である。
オフェーリアは値崩れを起こさないよう、各地で少しずつ販売することにし、しばらくあの階層に通うことに決めた。
だが次にダンジョンに向かったのは5日後。
その間オフェーリアは輿入れ先である公爵家と王家の間の協議に参加していたのだが、結果平行線で終わった。
どうやら王家の横槍は例の第4王子絡みのようで、オフェーリアは嫌な予感がする。
「おはようございます」
前回訪れた時は夜中と言える時間だったが、今回は朝一の混雑する時間帯を避けたので人はまばらだ。
「フ、フェリア嬢?!」
ゲルルートがびっくりして立ち上がった。
オフェーリアがここに来るのはギルドカードを作って以来だったが、多少の噂は聞こえてきていた。
それは、本人は関係なくてもトラブルにつながるかもしれない事象で、ゲルルートは危惧していたのだ。
「少しお久しぶりです?
あれからダンジョンに行ってきたんですよ」
「……話は聞いている。
ちょっとこっちに来てくれるか?」
何も噂になるようなことはしていないはずなのだが、一体何なのだろうか。
冒険者ギルドを出たオフェーリアは、その足でダンジョンに向かった。
途中の店にもギルドの出張所にも見向きもせずに、一直線にダンジョン入り口に向かったオフェーリアは直前で眼前に立ちはだかれて眉をひそめた。
「あの……頼みがあるんだ!」
声をかけてきたボロボロの装備をつけた少年だが、これはとても人に頼み事をする口調ではない。