『ダンジョン行、浅層4』
上級冒険者が浅層での魔獣討伐の結果、いわゆる雑魚魔獣をそのまま放置していくのはよくあることだ。
この場合、半日も経てばダンジョン自体が吸収してなくなるが、その前に他者が拾って自分が討伐したものとすることがある。
この行為をするのは底辺の冒険者なので周りもあまりうるさいことは言わないが、一定の守るべきマナーと言うものがある。
雑魚魔獣を蹴散らしていったオフェーリアは何も気にしていないが、このようなまるで残飯漁りのようなことを無尽蔵に許すわけにはいかない。
今回、この場の兵士たちは見逃すことにしたが、この行為は本来の持ち主の許可を得なければならないのだ。
持ち帰った素材の量が多かったり、手持ちの素材が嵩張ったりする場合のためダンジョンの入り口近くには冒険者ギルドの出張所がある。
件の幼馴染み2人組は重いソリをそこまで引き摺ってきてようやく換金にこぎつけようとしていた。
「ちょっと待った!
君たち、これらは自分たちが狩ったものじゃないね?」
冒険者ギルド出張所の受付担当の職員はすべて男性であるが、相手に合わせて穏やかに話をすることができる職員が配置されている。
特にここは魔獣討伐の最前線なので、無能な職員は皆無だ。
それに彼はこのふたりのいつもの稼ぎ、いわゆる実力を知っていて、ラットならともかく、フォックスなど一太刀当てることも出来ないはずだ。
横で手持ち無沙汰にしていた職員が、入り口の兵士から回ってきた今日の入場者リストに指を這わせていく。
「今日は入場者が少ないな……
あ〜多分コレだな」
目の前の2人の前に、ソロで入っていった女冒険者がいる。
ここは初めてのようだが兵士が見るにはダンジョン慣れしているようだ。
「君たち、許可はとって……なさそうだね」
「許可?何の?」
とぼけているのか本当に知らないのか定かではない。
だがギルドとしては少なくともサンドフォックスを認めるわけにはいかない。