『ダンジョン行、浅層2』
初めは単独で出現していたサンドフォックスだったが、そのうち2匹、3匹と複数出現するようになっていた。
オフェーリアのように攻撃魔法を使えるものなら単独行でも問題ないが、魔法を使わないこの国の冒険者が単独では、特に新米冒険者には難しいものがあるだろう。
「この狐ちゃんは常時依頼のひとつなのか……
大した金額ではなさそうだし、これも放置ね」
オフェーリアは今まで1匹の魔獣も収納していない。
別に金子に不自由しているわけではないし、もし困れば無数に保存している亜竜でも換金すれば良いだけだ。
階段を降りた先の第4階層は岩石タイプの階層だったが、今までとはまったく違った景色だった。
「綺麗……」
1、2、3階層はどういう仕掛けになっているのか、薄ぼんやりとした明るさで統一されていて先を見通すことが出来たのだが、この階層は違う。
階段のすぐそばから壁面にはびっしりと発光性の苔が生えていて、それがあたりを照らしているのだ。
「これは……碧光苔?!」
採取用のコテで剥ぎ取った苔を見て、そして念のため鑑定して、オフェーリアは驚きの声をあげた。
この碧光苔という苔は高位ポーションの素材なのだが、オフェーリアの故郷の都のあたりでも、ここに来る前にいた大陸でも滅多に見ることのない希少な素材なのである。
「こんな事って……」
オフェーリア、絶句である。
しばし茫然と見つめていたオフェーリアだが我に返ると壁面に取り付き碧光苔を精査し始めた。
そして状態の良いものを採取していく。