『ダンジョン行、浅層1』
「気をつけて」
そう声をかけられて入っていった先は、今までのダンジョンではお目にかかったことのないほどの大ホールだった。
所々の松明が照らす、岩石で形取られたそこはまるで異世界に迷い込んだような異常さだ。
「ふぁ〜
さすが歴史のあるダンジョンね。
この調子なら先が楽しみ」
2階層に向かう道を小走りに駆け抜けていった。
「ここも岩石タイプの階層か。
冒険者ギルドで買った冊子によると、この階層から魔獣が出現すると言うことだけど……」
小さな影がオフェーリアが通り過ぎた道の端から飛び出してきだが、振り向きざま風魔法のエアカッター一発で屠られた。
「ストーンラットの一種かしら?
いらないわね」
あっさりと放置である。
別に討伐した魔獣すべてを持って帰らなければいけないわけではない。
オフェーリアは次々と出てくるストーンラットを屠りながら先に進んでいった。
「2階層はそれほど広くないはずなんだけど……」
およそ3刻、【浮遊】で浮いて風魔法で後ろから押されると言うズルをして、結構な速度で進んできたオフェーリアはようやく階層の境の階段に到着した。
「結局ストーンラットしか遭遇しなかったわね。
ここにはあとフローラビットがいるはずなんだけど」
オフェーリアはワクワクしながら第3階層に降りていった。
「ここと次の4階層までは岩石タイプだったわね。
おっと、狐ちゃんの登場だわ」
サンドフォックス。
砂を使った攻撃を仕掛けてくる、風属性の魔獣である。
「前の階層のあのストーンラットの大きさ(全長20cmくらい)からこのサンドフォックスの大きさ(全長1.5メートル〜)なんてずいぶん極端ね。
これは初心者がバカにしていたら殺られるわ」
いわゆる初見殺しと言うやつである。
ダンジョンはこんなふうに冒険者を淘汰していくのだ。
「あ〜ゾクゾクする!
このダンジョンを腰を据えて攻略したいわ!」
オフェーリアの悪い癖が出たようである。