『ドラゴンを屠るという簡単なお仕事』
今オフェーリアは、気分転換のためにダンジョンを訪れていた。
ベッケレートのダンジョン51階層で、レッサーブルードラゴンをはじめ数種類のドラゴンを採取するためとストレス解消のためだ。
「相変わらずごちゃごちゃとたくさんいるわね。
まあ、ここまで来れる冒険者は限られているわよね」
たとえA級、そしてS級の冒険者でも、ここの最下階層にいるドラゴンと相性の良いものは限られている。
「これからは私も、いつ来れるかわからないからパーティを組むわけにはいかないわけだし……」
50階層から51階層をつなぐ階段に腰掛けたオフェーリアは、膝に肘をついて眼前に広がる岩肌を見ている。
「まあ、マティアスほどの冒険者はなかなかいないわよね。
……さて、そろそろいきましょうか」
黄昏ていたオフェーリアだったが、意を決して立ち上がった。
何しろ時間は限られている。
きちんと出かける事は言ってきたが、ひょっとすると今頃騒ぎになっているかもしれない。
「ではサクッといっちゃいましょうか」
「フェリア様〜」
罵倒されるよりも堪える、おどろおどろしい地の底を這うような低音の声で名を呼ばれると、何も悪いことをしているつもりはないのだが身につまされてしまう。
「あら、ドーソンじゃないの。
どうしたのかしら?」
「フェリア様、今何刻だとお思いですか?」
「あら?
そうね、外は明るいわね」
実はオフェーリア、51階層に出現したドラゴンの数と種類に大変気分が高揚して、この時階層にいたすべてのドラゴンを屠って……回収してきたのだ。
そしてそのあと、竜種の住処の近くにしか生息しない貴重な薬草も採取してきた。
オフェーリアの時間の観念は麻痺していて、実は丸一日以上経過していた。
「フェリア様ぁぁぁ」
今、目の前にはメデューサの如く怒ったドーソンがいた。