『治療のその後』
第4王子エクトルに関する情報は事細かく国王に報告されていた。
此の度彼は息子を1人失うことを覚悟していた。
だが、そこにもたらされたひとつの知らせに、彼は思わず立ち上がり歩き出そうとしていた。
「陛下、エクトル殿下の容態は問題ないそうです。
どちらかといえば体力の消耗が激しく、今はお休みのそうでお見舞いは明日になさる方がよろしいかと」
「そう、じゃな。
そなたの言うとおりじゃ。
儂が浅慮じゃったわ」
「それよりも魔法姫様のことでございます」
此の度のエクトル王子を救った件を知った者たちは、オフェーリアのことを畏敬と尊敬を持って【魔法姫】と呼び始めているのだ。
「かの姫の特別な回復薬が我が息子の命を救ってくれたのじゃな。
姫には感謝してもしきれぬの」
今現在、国王は単純に喜んでいるが、臣下である侍従長はそれだけではない。
史上初めてルバングル王国に迎えた魔法族の姫であるが、かの姫は魔法だけでなく、薬師として得難い技術を持っているのだ。
「これは、公爵家との縁組は早まったかもしれませんな」
変な警戒などせずに、王家に取り込むべきだったと侍従長は思う。
彼は魔法族がこれほどのポテンシャルを持つとは思い至らなかったのだ。
「だがヴァサブラル公爵家が簡単に引くとは思わんが」
「少し動いてみましょう」
こうしてオフェーリアの知らないところで暗躍が進むことになった。
王家側の都合で、ヴァサブラル公爵家との正式な婚約式が延期された。
「やっぱりマズったかなぁ」
オフェーリアは憂鬱そうだ。




