『目覚め』
ルバングル王国第4王子エクトルは、あたりが薄暗い中目を覚ました。
「ここはどこだ?
私はいったい……?」
自分がなぜ眠っていたのか、それすら思い至らず、第4王子はしばし茫然としていた。
だがしばらくすると苦い記憶が蘇ってくる。
彼は自分が亜竜のブレスを受けて倒れたことを思い出した。
「なぜ、生きている?」
そして自分の右頬を撫で、その右手を見た。
「爛れていない?
……確かに、ブレスの熱さを感じたはずだ。
この身の半分は焼き尽くされたはずなのに……
これはどうしたことなのだ?」
ベッドの上の王子の、動いた気配を感じたのだろう。
隣室にいた騎士と医師の助手が入室してきた。
「団長!
よく生還なさって下さいました」
騎士の声は震え、その目は潤んで第4王子の顔をまともに見ることができない。
そして助手の方は別室に待機している医師を呼びに走っていった。
「私はあのあと、どうなったのであろうか?」
「はっ、団長は右半身にまともにブレスを浴びて瀕死の重傷を負われました。
すぐに王都までお運びした次第です」
「だが、今の私は……」
「そのことに関しては第3騎士団の団長か医師殿にお聞き下さい」
騎士自身もどう説明したら良いのかわからないほど動揺していたので、するっと丸投げした。
「フェリア様、あの回復薬は何なのですか?」
迎賓館に戻ってきたドーソンはオフェーリアに質問した。
「あれは最高級のポーション【神薬アムリタ】よ。
死者を蘇らせること以外はすべての状態に効果を発揮するのです。
普通ポーションは病には効きませんが、このアムリタは別ですの」
オフェーリアはニィと嗤った。
「もちろん、お高いですわよ?」
対したドーソンはオフェーリアの雰囲気の変化に立ち竦んだ。