『瀕死の王子』
オフェーリアの歓迎の出迎えのために団長をはじめ選抜された30名が抜けた第3騎士団は、その時行われていた討伐作戦から外されていた。
無事任務を終えた今も、貴重な休養を与えられていたのだが。
それは一騎の早馬によってあっさりと終った。
「殿下が瀕死の重傷を負われて運ばれて参ります。
お医師を、お医師をお願いします!」
その後、騎士団本部は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。
だがそれは、いざ怪我人の状態を見て、悲愴感に変わっていった。
そこで団長が思い出したのは、稀有な回復薬を騎士に使ってくれた異国の姫君の事だ。
悲惨な状態の第4王子を思い、団長は駆け出したのだ。
「なるほど……
第4王子殿下が瀕死の重傷なのですね。
とりあえず、まだ生きていてくださっていれば、可能性はありますわ」
団長はその言葉に一筋の光明を見た。
迎賓館の建物から出たオフェーリアと団長は、最短距離を突っ切るため中庭を走り塀を飛び越えて騎士団本部に飛び込んだ。
「【洗浄】」
その部屋に入る前に自分と団長に【洗浄】の魔法をかけ身を清める。
そしてドアを開けるとベッドの前には絶望感をその目に宿した医師と思われる男とその助手、そして騎士が3名が振り向いて、オフェーリアたちを見た。
「薬師殿をお連れしました」
「殿下のお怪我を診させていただきます」
この部屋は休憩室なのだろう。
質素な寝台に身体を横たえている第4王子は、筆舌に尽くし難い状態だった。
「ブレスにやられたのですって?」
端正だろう顔の半分は焼けただれ、髪もほとんどが燃えてしまっている。
右手は肘のあたりで辛うじて繋がっている状態。脚はとうとう千切れてしまったようだ。
そして出血を抑えるためにきつく縛ったところから壊死が始まっていた。
「これでよく生きていられたわね。
大丈夫よ。
一気にいくわ」