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『冒険者たちとの食事』

「やっぱり今夜も冷えるわね」


 今はまだ季節としては夏のはずなのに、日が落ちるとまるで晩秋のように冷え込んでくる。

 あたりが暗闇に閉ざされる前に野営のための空き地についた一行は、思い思いに夕飯の支度を始めた。

 そんななか、オフェーリアは馬車の近くにテントを張り、異空間収納から大鍋を取り出した。

 今夜のメインはミルク仕立ての具沢山シチューである。


「フェリアちゃん、お言葉に甘えて皆で来たぜ」


 アレックスがパーティーの5人を連れてやって来た。


「こいつらは右からセダン、マイカル、シミタール、コンロル、チコだ。

 まずはチコとシミタールが見張りに立つ。

 この間は、飯はお預けだな」


 紹介の最中に軽い会釈で挨拶していたオフェーリアは、聞き捨てられない言葉を聞いた。


「ちょっと待って下さい」


 そう言ってアイテムバッグから取り出すように見せかけて、異空間収納から包みを2つ取り出した。


「これ、昼食用にストックしていたサンドイッチです。

 これなら立ったまま食べられるし、小腹くらいは収まると思います」


 空きっ腹を抱えたまま見張りに立たなければならないと思っていた2人は感激して礼を言うことも忘れて立ちつくしている。


「熱いお茶を淹れたらすぐに持っていってもらいますね」


 2人が位置に着くのを見送り、オフェーリアはテントの中の携帯型魔導コンロで湯を沸かしはじめる。

 その間に各自食器を出してもらってシチューを配膳していった。


「おお、美味そうだ」


 男たちが口々に感謝を述べてくる。


「南玉ねぎとホクホクじゃがいも、蓮の根と甘カブにスモークハムを使ったミルクシチューです。

 たくさんあるのでおかわり自由ですよ。

 それからパンも焼きたてのを持って来ました」


 大振りのバスケットに山盛りのロールパン。

 3人の男たちの手が次々とパンに伸び、なし崩しに夕食が始まった。

 そんななか、オフェーリアは追加の料理【コロッケ】を取り出した。

 これはじゃがいもを茹でて潰したものに具を混ぜ込んでコイン型に成形し、衣をつけて油で揚げる魔法族では珍しくないものだ。

 これも揚げたて熱々である。

 そして腹持ちもよい。


「お?新しい料理か?

 ……何だこれ!

 サクサクして美味いぞー!」


 セダンと言う、盾職の男が感激の叫びをあげている。

 その声に、離れたところにいた乗客たち……オフェーリアを除いた8名の男女が一斉にこちらを見ていた。


「お野菜の量が足らないので、かわりにリンゴを食べてくださいね」


 これまたカゴいっぱいのリンゴを出すと、ようやくオフェーリアは腰を下ろしシチューの深皿を手に取った。


「うん、今日も美味しく出来ていますね」


「フェリアちゃん、ここにきて温かいものが食べられるなんて、思ってもみなかったよ」


 そう、この空き地で野営の準備を始めてから、さらに気温は下がっている。

 現にオフェーリアは外套を羽織っている。


「この季節にこれほど冷えるのは普通なんですか?

 私の出身地では、今は夏ですよ」


「ああ?

 そう言えば少し早いかな」


 彼らは頑強な筋肉に覆われているため、寒さは感じにくいようだ。


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