『フェリアのアトリエ?』
「そうですわ。
どちらかと言えば【薬師】が本職ですわね。
なのでアトリエも“持ってきた”のですよ」
ドーソンは言われた意味がわからず戸惑っている。
こういう場合は見せて体験させるに限る。
「ドーソンはこの天幕のことは知っているわね?」
オフェーリアに与えられた応接室、その空いた場所に天幕が現れた。
「中に入ってちょうだい」
ドーソンがオフェーリアに続いて入り口の布をくぐると、彼女の仕えるべき相手は早足で奥まで行き、突き当たりのドアを開けて中に入っていった。
ドーソンもそれに続こうとしたのだが眼前でドアが閉まり、開けようとしてもその存在が消えてしまったのだ。
「は?フェリア様?
これは何の冗談ですの?
ふざけないで下さいまし!」
一瞬の沈黙の後、再びドアが現れ、その中からオフェーリアが姿を現した。
「どう?びっくりしたかしら?
これは異空間に作った私のアトリエなの(本当は都にあるウッドハウスに繋がっているだけだ)
この中で調薬をするのよ」
「そ、そんなことが……」
「可能なのよ。
もちろん誰でも出来ることではないわ。
空間魔法を極めたものしかなし得ない事なのよ」
オフェーリアはにっこりと笑った。
「私が好きな時に好きなだけ、この中で過ごすことを要求するわ。
もちろんそちらが認めない場合でも、この権利の履行を宣言します」
「フェリア様?
何より私の一存では……」
「では、そう伝えなさい。
私は今夜は向こうで過ごすことにします」
また姿を消したドアの前で、ドーソンは呆気にとられて佇んでいた。




