『違い』
「ギルドカードができましたよ」
ゲルルートではない方の職員が受付カウンターの奥の部屋で作ってきたカードは、何の変哲もない銅製であった。
それには隅の方に番号と【フェリア】という名が刻まれている。
そのカードを手渡されたオフェーリアは、くるくると裏表を何回か見て、そして微かに首を傾げた。
「えっと、これは?」
「フェリアさんは名前しか情報がなかったので。
普通は職種とか、得意な戦闘方法とか色々書くのですが」
「いえ、それはいいのですが、このカードに私が何かする事は?
どうやって同期するのですか?」
オフェーリアの知っているギルドカードは高度な魔導具であって、持ち主の血や魔力を登録することによってすべての情報が、中央国家にあるたったひとつの本体に記録される。
「?
よくわかりませんが、割り振られた番号と名前を台帳に記入して終わりですよ」
何ともアナログな事だ。
「では、身分証明書としては価値が低いのではないのでしょうか」
「そうですね。
なので滞在する町ごとに冒険者ギルドに行って登録してもらいます」
オフェーリアはこの時点で理解した。
魔法が根付いていないこの地では、魔導具に関してもほんの基本的なものしか普及していないのだ。
ギルドカードの身分証システムも、オフェーリアたちにとってはそれほど大したものではないが、この国、いやこの大陸ではまったくの未知の技術なのだろう。
「わかりました、ありがとう」
これはあまり接触しない方がよいだろう。
オフェーリアはベルベットモンキーの買い取り金を受け取って、早々に迎賓館へと戻ることにした。
……だが鑑定はまだ続いている。