『冒険者登録』
「ふむ、この東亜大陸の文字ではございませんな」
わかりきったことを勿体ぶって言われ、カチンときたゲルルートだった。
わざわざ連れてきた爺だが使えない。
「こちらの方は隣の大陸から来たそうだ」
「はい、つい最近渡ってきました」
隣の大陸の王族の姫君が、我が国の王族に嫁いでくると聞いていたゲルルートは目の前の少女はその随行者なのかもしれないと思い至った。
「悪いが俺たちにはこの文字は翻訳できない。
今回は初めての冒険者登録と言う形になるが、悪いな」
「いいえ、最初からそのつもりでしたから。
え……っと」
差し出された申し込みの用紙(羊皮紙)に、ちゃんと東亜大陸共通語で書き込んでいった。
それはゆっくりだがとても丁寧な文字だ。
「名前はフェリア。
年齢は……空欄か。
いや、書きたくない事は書かなくてもいいんだ」
ギルド登録は、それだけは万国共通なようだ。
オフェーリアは前回の登録を思い出してペンを進めた。
「あ、できたらここ、職種や得意な技何かを書いてもらえば、それに合った依頼を勧めることが出来る」
そう、そんなことも言っていた。
もうあまりに昔のことなのですっかり忘れていたオフェーリアは、思わずクスリと笑ってしまう。
「あちらでしていた職種がこちらでも通用するのかしら?
私は元々冒険者ではないのだけど」
正直に書くべきなのか悩んでいると、気づくと3人が揃って覗き込んでいた。
「向こうでは最初は商業ギルドに登録したんです。
今回は魔獣の素材を買い取ってもらいたくて、なので手っ取り早いこちらの方を選んだわけです」
もちろん、見るからに物理攻撃職には見えないオフェーリアだった。