『野営調理』
「さて、この後はテントの設営と夕餉の支度ですわね」
すでに自分用の天幕と怪我人用のテントは設置済みである。
ドーソンは天幕で一緒に寝むことにした。
騎士団は一応遠征の時は念のため、各自テントを持参していて、諸々の荷物は馬にくくりつけられている。
「ドーソン、あなたお料理は出来て?」
「あまり混み入ったものはできませんが、それなりには」
「では手伝っていただくわ」
エプロンが投げ渡された。
魔導コンロ2台に魔導オーブン、調理台が出され、大鍋には【ウォーター】で精製された水が入れられ火にかけられた。
オフェーリアの異空間収納から次々と出てくるものを物珍しげに見ていた騎士たちだが、団長に叱咤されて調理を手伝うものが加わった。
「あなたたちはこのキャベツをザックリと刻んで下さい。
スープに入れるので大きさは適当でいいわ」
引き続き、調理台にはハムの塊や玉ねぎが出されて、早速玉ねぎの皮が剥かれていく。
そしたまた新たに取り出されたのは大きなフライパンだ。
「これで玉ねぎを炒めて下さい。
焦がさないように気をつけて」
熱したフライパンにバターをひとかけら、そして玉ねぎが慎重に炒められていく。
ハムは大きめのサイコロ切りにされ、キャベツとともにとりわけられた。
「今日は簡単なスープにするわ」
炒まった玉ねぎに小麦粉を振るい、粉状に加工したブイヨンを湯で溶いたもので伸ばしていく。
そこにキャベツとハムを入れ、火が通ったらミルクを加えて出来上がり。
味付けはシンプルな塩胡椒だけだが玉ねぎの甘みとブイヨンの旨みが加わった優しい味に仕上がった。
これと、ドーソンがただひたすらオーブンで温めていたパンと、異空間収納の中にあったミートボールの素揚げが夕食となった。
「おお!これは凄い!!」
「俺、こんな美味いもの初めて食べた!」
騎士たちそれぞれが色々なリアクションで貪り食っている。
なかには涙しているものもいた。
その中で団長だけがひたすら恐縮している。
「申し訳ございません。
次期公爵夫人に料理させるなんて」
「私は冒険者もしていたので、これくらいの事は慣れていますよ」
むしろ“公爵夫人”なんていうのが異常なのだ。