『ポーションでの治療』
本来ならば魔法で精製した水で洗ってから治療を始めるのだが、今回はその時も惜しんでまず脇腹の患部をポーションで洗った。
「やはり内部も傷ついているのね」
なので押さえるだけでは血が止まらない。この騎士はここまでかなりの血を失っているはずだ。
だがポーションはちゃんとその効力を発揮してくれた。
「おお!傷が!!」
まるで時がスローモーションで巻き戻るように、血にまみれた内臓が再生していく。
そこにもう一度ポーションをかけると肉が盛り上がり、どんどんと傷が塞がっていった。
「凄い……」
患者を押さえていた騎士たちの口から感嘆の言葉が漏れるが、オフェーリアは次の患部、腕にその意識を向けていた。
「これは……」
速やかに命に関わる脇腹の傷を優先させたが、応急的に巻かれた包帯を取り去り、その患部を見て眉を顰める。
それは森狼に齧られて、肉は抉れ骨が砕けて、本来なら切断するしかないほどの傷だ。
「こちらも酷いわね」
患者はもはやショック状態でピクリともしない。
オフェーリアは
助手?である騎士にポーションを渡し、すぐに飲ませるように指示をした。
腕の位置、特に捻れなどないように慎重にポーションをかけていく。
すると脇腹の時と同じように患部が再生され、肉が盛り上がっていく。
さほど時間をかけずに傷ひとつない状態に戻った姿を見て、集まって来ていた騎士たちからはどよめきが上がった。
そして気づくとひとりの騎士が懸命に口移しでポーションを飲ませている。
何とか嚥下させることができたのだろう。
患者の頬に血の巡りが戻ってきていた。
「さて、最後は骨折ね。
これは単純に折れているだけだから内服したポーションだけでいけるかな?」
【探査】で患部を診てみたところ、筋の捻れなどもなく、正常に治癒できたようだ。
「はい、治療は済んだわ。
でも失った血液は戻らないので、この増血剤を飲んで安静にさせてあげて下さい」
増血剤の錠剤は、先ほど口移しを行っていた騎士に渡した。