『怪我人』
「どうやら勝負がついたみたいよ」
群れで襲いかかってきた森狼を、逃げた数匹以外殲滅させた騎士団が団長の号令の元、一ヶ所に集まってきている。
それをみたオフェーリアは、結界を解いて馬車から降りると、団長に話しかけた。
「討伐ご苦労様です。
皆さんご無事ですか?
お怪我なさってませんか?」
「おおーい、誰か水をくれ!
それと包帯を持ってるやつはいないか?!」
オフェーリアが団長に尋ねていたとき、森の奥から同僚に支えられた怪我人が運ばれてきた。
彼は右腕と脇腹をガッツリ噛まれていて、かなりの重傷だ。
「まあ!
あの方の治療を私に任せていただけませんこと?
私、祖国では薬師をしておりましたの」
悲愴な顔をしていた騎士たちの視線が、一斉にオフェーリアに向いた。
団長も藁にもすがる思いで、その提案を呑んだ。
「患者をこちらに寝かせて下さい」
オフェーリアは異空間収納から診察用の寝台を出して、指示をした。
もちろん武具や防具はあらかじめ外させている。
「着衣をナイフで裂いて患部を診ます。
この騎士団に衛生士のような存在はいますか?」
「はい、僕がその役目を仰せつかっております」
先ほどからてきぱきとオフェーリアの指示をこなしていた少年騎士が応えてよこした。
「そう、よかったわ。
これから治療を始めるので、誰かに手を貸してもらって患者を押さえて下さい。
かなり痛むと思うので」
すぐにそばにいた騎士たちがオフェーリアの指示に従った。
「待って!
右脛を骨折しているようだわ。
膝上で固定してちょうだい」
オフェーリアはまず初級ポーションを取り出した。
この治療は、体内に魔素すら持っていない人間に対して、魔力を練り込んだポーションが効くかどうか、実験の意味合いもあった。




