『人たらし』
「この大陸にも魔獣はいるのかしら?」
「もちろんです。
なので我が王国では各地に配置された騎士団が20ありますし、町はもちろん少し大きめの村には冒険者ギルドがあって冒険者たちが所属しています。
その、彼、彼女らが魔獣の討伐を行なっているのです」
「まあ!
冒険者ギルドがあるのですね?!
私、行ってみたいですわ。
王都のギルドが一番近いかしら?」
ドーソンはびっくりした。
冒険者ギルドなど貴族の淑女にこれほど似つかわしくないものもない。
「フェリア様、それは」
「私、あちらでは薬師でしたの。
商業ギルドと冒険者ギルドにも所属していましたのよ。
今現在、こちらの金子も持っておりませんし、両替が出来ないなら手持ちの素材を売って、懐を暖かくしたいわ」
ドーソンは何と言ってよいのか、もう言葉が出てこなくて口をパクパクさせている。
「公爵夫人としては失格かもしれないけど、何とか両立していきたいわ。
それにはドーソン、あなたの力が必要なの」
オフェーリアの人たらしの一面が、ここで発現した。
見た目少女のオフェーリアがその目を潤ませて、上目遣いで見つめてくる。
「わ、私は、フェリア様をお助けするという事をこれからの生涯をかけて邁進させていただく所存でございます。
なので、これから施される教育が滞こおらない限り、協力させていただきます」
オフェーリアは内心でニンマリとした。
王国は御し易い人物を選んでくれたようだ。
「私もあなたの期待に応えられるよう、頑張りますわ」
王国やそこに住む貴族のことなど、大まかに説明を受けていたところ、突然馬車が激しく揺れてその場に止まった。
「な、何事でしょうか?」
その身を投げ出されそうになったドーソンが座席につかまり、うろたえている。
片やオフェーリアは落ち着いたものだ。
「状況的にはおそらく魔獣か盗賊でしょうね。
しばらく様子を見てみましょうか」
さて、騎士団のお手並み拝見である。