『オフェーリアとドーソン』
翌朝、オフェーリアの王都への旅が始まった。
王国側としては別の大陸から、今まで望んで望んでやっとやって来た【魔法族】の女性を歓待するため非常に気を使っていたのだが、オフェーリアはそんなことは知らない。
ただ警護してくれている騎士団も、これから侍女となるドーソンにも嫌な感じは受けなかった。
その馬車の中の沈黙に耐えられなくなったのは、やはりオフェーリアの方だった。
「私たちはこれから一緒に行動する事になるのですから、お互いのことをもう少し知っていてもいいのではなくて?」
「申し訳ございません。
実は私も戸惑っておりまして、正直どうすればよいのか悩んでおりました」
すまなそうな表情のドーソンが俯いた。
「それもそうね。
こんなよくわからない種族の面倒を見ろと言われたら困ってしまうわね」
この大陸の住人にとってはお伽話の中の種族である魔法族、彼らは魔法族のことを妖精族などと呼んだりする。
その空想の中の種族が目の前にいるのだ。そしてその種族の世話を命令されて、ドーソンも困惑しているのだろう。
「もしあなたが嫌でなければ仲良くしたいわ。
押しつけるつもりはないから、はっきりと言ってちょうだい」
「私はこの大任を全うする以外、生きていくすべがありません。
もちろんフェリア様に思うところはございませんので、できればご機嫌を損じることなくと思っております」
「ではよろしく。
これから色々教えてちょうだい」
どうやらドーソンに二心はないようだ。
なんとか上手いことやっていこうと思うオフェーリアだ。
「出発前にも申しましたが、これから王都まではこのような森や平原が多ございます。
一行には騎士団が随行しているので、襲撃などはないと思います」
何しろ辺鄙な、街道とも言えない規模の道だ。
盗賊が身を隠す場所など、それこそ無限にある。