『出立』
応接室から出て向かった広間には、迎えの騎士団が整列していた。
オフェーリアの到着を告げられた彼らは一斉に片膝をつく。
そして右腕を胸に、首を垂れた正式な礼をしてオフェーリアを迎えた。
「ようこそおいで下さいました」
神官長の説明によると、彼らは王国の第3騎士団なのだと言う。
この度は王直々の命令で、オフェーリアを迎えにやってきたそうだ。
「世話になります」
そのまま馬車に案内される事になったのだが、騎士団の団長が怪訝な顔をして聞いてきた。
「姫君、お荷物はどこでしょうか?」
いわゆる輿入れのためのお道具や衣類などのことを聞いている。
だがそれに対するオフェーリアの返事はそっけないものだった。
「異空間収納に入れてきましたから、手持ちの品はありません」
異空間収納と聞いて、おお、と驚きの声が上がる。
魔法をまったく知らないわけではないのだが、少なくともこの場にいる騎士たちは見たことも触れたこともない未知の力に憧憬を抱いているのだろう。
「では出発いたします」
神殿の大扉まで見送りに出てくれた大神官に丁寧に礼を言ったオフェーリアは、馬車に乗り込んだ。
そして出発が告げられる。
この日は神殿の門前町にある高級宿に宿泊するそうだ。
神殿のお膝元にはその礼拝者を客とする商業都市が出来上がっていた。
そこには当然身分の高い客に対して、高度なもてなしを要求された宿もある。
オフェーリアたちは、そんな宿のひとつに宿泊する事になっていた。