『新調』
「で、今日は一体何の用なんだ?」
ひとしきり興奮して、そして我に返った教官は、オフェーリアに話すように促した。
「魔導テントについて相談しに来ました」
「テント?天幕ではなく?」
彼はオフェーリアのために、ほぼ家と言ってもよいほど精巧な魔導具を渡してある。
「はい。
実は今回護衛を依頼した冒険者が、これからのことを考えると是非欲しいと。
今回の素材の報酬で譲って欲しいと言うのです。
たまたま、本当に基本的な魔導テントを貸したことがあって、それを是非と言われてるのですが、水廻りの性能に不安があって……
教官、どうにかなりませんか?」
オフェーリアはその場に、あのテントを出してみた。
「ん〜そうだなあ」
ひょいと入り口の布を上げて、中に入って行った教官はしばらくして戻ってきた。
「その相手は人間なんだな?
それなら……一から組み直した方が早いかもしれないな」
教官は懐からペンとメモ帳を取り出して、猛烈な勢いで書き始めた。
こうなると止まらなくなるのを知っているオフェーリアは、その状況を見守るしかない。
そして小半刻あまり経ち、教官が顔を上げるのを見て声をかけてみる。
「どうですか?
何とかなりそうですか?」
「ああ、今やってる仕事を一旦中断して、こっちを最優先で製作する。
そうだな……3日後、引き取りに来てくれ」
「で、おいくら支払えばよいですか?」
「そうだなあ、金貨500枚くらいかな」
思ったよりも高くない。
これなら他にも欲しがる者が出てくるだろう。
「おいおい、こいつは特別だぞ。
そのかわりと言ってはなんだが、あのエンシェントサンダードラゴンを適正価格で買わせてくれ」
「テントの代金でもよろしいのに」
「何を言っている。
あのドラゴンの価値を見誤るんじゃない」
教官は憤慨している。
そして四半刻、みっちりと説教されたのだ。