『魔導具士との遣り取り』
面倒なギルドとの取引きを終えた翌日、オフェーリアは周りには静養と言ってウッドハウスに篭っている事にし、実は都にやって来ていた。
ここでもオフェーリアが持ち込んだ古龍は久々の大きな話題となり、いつもは静かな都も賑わいがひとしおである。
「こんにちは」
その工房は、オフェーリアの教官でもある、都一番の魔導士のもので、奥では弟子たちの喧騒が聴こえてくる。
「おう!
今、一番話題の人物のご登場か!」
オフェーリアの声を聞きつけて、今日の目当ての教官が顔を出した。
「話題?ああ、ひょっとして古龍?」
「あれほどの形は何百年ぶりか、と評判になっている。
俺も早々に入札の申し込みをして来たところだ」
「古龍はあれ一頭だけど、エンシェントドラゴンは何頭かいるので、良ければお譲り致しますよ」
「何!本当か?
是非欲しい!!早く見せてくれ」
教官はそわそわと落ち着きなく、こうなれば子供のようだ。
これは先にドラゴンを提供しないと話にならないかもしれないと、オフェーリアは工房で一番大きな解体場で披露する事にした。
「エンシェントドラゴンは何頭か手に入ったんです。
皆、それなりに歳を経ているようで、良い形ですよ」
そう言ってまず取り出されたのは、見事な黄金色をしたサンダードラゴンがエンシェント化したものだ。
「これは……何と素晴らしい」
目を瞠った教官がふらふらと近づいていって、その見事な鱗を撫でさする。
もし1人なら頬ずりさえせんばかりの感激のしようだ。
「そうでしょう?
【真空】で仕留めてきたので、血の一滴も損なっていないのですわ」
このドラゴンは最下層のひとつ手前の階層にいた、ダンジョンの副ボスとも言えるドラゴンだ。
「あと……
アースドラゴンの特異種がいたんです」
これはどちらかと言えば鍛治職が狂喜するだろうドラゴンだ。
「鱗がオリハルコン化してるんです」
オークションに出せば、古龍を超える値がつくかもしれない。