『ダンジョンコア』
駆け寄ってきたマティアスが、アイテムバッグからポーションを取り出し、その中身をオフェーリアの手にぶっかけた。
続けてもう一本、精も根も尽き果てたオフェーリアの口に無理やり突っ込むように飲ませて様子を見る。
「ありがとう、もういいわ」
3本目のポーションを取り出して差し出しているマティアスに礼を言って、やんわりとポーションを断る。
そのかわり自分のポーチから魔力回復ポーションを取り出すと、一気に飲み干した。
それからオフェーリアは手を握ったり開いたりして、異常がないか確かめると、ゆっくりと立ち上がった。
「ふう、さすがにてこずったわね」
結界を解くと【真空】魔法は霧散して、そこには動かなくなった古龍が伏せの姿勢のまま息絶えていた。
「どうやらこの階が最下層のようだ。
そしてこいつがこのダンジョンの主なんだろう」
「結局このダンジョンは55階層にまで進化していたわけね。
でも深部の面積はずっと広くなっていた」
古龍を収納したオフェーリアは、心配でヒヤヒヤするマティアスを従えて最終階層を探査していた。
「おお、見えてきた。
あれがダンジョンコアだ」
オフェーリアが初めて目にするダンジョンコア。
それはクリスタルの円柱の中に浮いた、巨大なエメラルドの結晶だった。
それは淡く光輝き、点滅している。
「ダンジョンコアを破壊したら、そのダンジョンはただの地下洞窟になってしまう。
なので破壊は硬く禁止されているんだ」
確かにダンジョン都市でそんなことになれば死活問題だ。
オフェーリアたちはそっとその場を後にした。
「さて、後は帰るだけだけど、いくつかの採集場所以外は駆け足で進んでいいから、でもそれでもひと月くらいはかかるわね」
「もう今更だからな、ゆっくり戻ればいいのと違うか?」
地上は、今は実りの秋。
2人がこのダンジョンに潜って、もうすぐ1年になる。