『vs古龍』
その鼻息は膨大な魔素が含まれ、それが圧となって2人を襲う。
咄嗟に張った障壁で事なきを得たが、あのまま直撃すればただでは済まなかっただろう。
「っ!このデカブツ!
フェリアっ、どうするつもりだ!?」
「血も欲しいから【真空】で窒息させる!
マティアスはアレの意識を引きつけて!」
「了解!では行くぞ!!」
巨大な古龍は今までのようにはいかなかった。
普段なら魔法を一回かければ効果が出るのだが、さすがにこの大きさ【真空】の効きが悪い。
「これは囲まなきゃダメみたい。
……気合いを入れていくわよ」
とても人間とは思えない跳躍力で、古龍の背に飛び乗ったマティアスに気を取られた古龍がその長い首をめぐらせ、彼に向かって襲いかかってくる。
それを軽々と避けて、移動し続けるマティアスを囮にしてオフェーリアは魔力を練っていた。
『結界を維持しながら【真空】で屠る。
なるべく傷をつけずに手に入れたいから一気にたたみかけなければ』
「マティアス、いくわよ!」
オフェーリアが結界石を使う以外で結界を張るのを初めて見たマティアスが目を瞠る。
そして古龍が囲まれた瞬間、その空間に【真空】が展開されて動きがピタリと止んだ。
「イケたか!?」
オフェーリアの合図で古龍から離れたマティアスが、魔法を操作している最中の無防備な彼女をサポートするために、そのバスターソードの刃先は古龍の方を向いていた。
「まだまだ……」
食いしばった歯によって傷ついた唇から血が流れ出す。
限界まで紡がれた濃い魔力がオフェーリアの肉体をも傷つけて、差し出された手の指先からも血が溢れ出した。
そんな濃密な時がまるで弾けるように、突然結界の中の古龍が動かなくなり、同時にオフェーリアも崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んだ。