『最下層、直前』
「なあ、俺らって上では、とっくに死んだもんだと思われてるんじゃないか?」
「はあ?何言ってるの?
そんなわけないじゃないの。
ちゃんと定期的に報告してるわよ」
その絡繰はこうだ。
まずオフェーリアが直接ギルドに行くわけにはいかないので、舎弟?であるダルタンの所に転移してギルド長に報告してもらえるようにしている。
もう最近では呆れられていて、もうすぐ秋ですね、と揶揄されているほどだ。
「まあ、そう言うわけだからじっくり攻略していけばいいのよ」
何しろオフェーリアたちはただダンジョンを攻略しているわけではない。
第一の目的である素材の採集もしているし、ダンジョン各階層の記録もとっている。
出現した魔獣のサンプルの確保も忘れていない。
そしてギルド側が一番重要視しているのはダンジョンの地図だ。
オフェーリアの製作した、細かい情報も備わった地図は、このダンジョン都市の宝とも言える。
これだけで、提供したオフェーリアには莫大な報償金が支払われる事だろう。
「それにしても、もうすぐ秋か……」
2人がダンジョンに入ったのは初冬だった。
これほど長期の探査は前例がない。
それもそのはず、冒険者たちも人間である。ダンジョンのような劣悪な環境で季節が3つ巡るような間、耐えられるはずもない。
これはウッドハウスと最近はマティアスに貸し与えている天幕があってこそ、普段と変わらない生活が送れているからなのだ。
そして食生活も大きい。
毎日オフェーリアの美味しい料理を食べているマティアスは、上での生活よりも今の方がずっと快適だと思っていた。
そして何よりもオフェーリアの横は居心地が良い。
「さて、そろそろ終盤を迎えつつありますか」
目の前には巨大な、その身体が苔むした古龍がこちらを威嚇している。