『フラグ』
オフェーリアとマティアスはすでに49階層にて、次の50階層を目の前にしていた。
この階層は以前にはなかったもので、2人は文字通り前人未到の領域に足を踏み入れているのだ。
「あとどのくらいで最下層にたどり着くのかしら」
「そうだな。
パターン的にはこの後ドラゴン種が多く出現する階層が続いて、そのあと最下層ということが多いかな。
……フェリア、ドラゴン肉は美味いぞ?」
この時が、フェリアの心の中でドラゴンが食材と化した瞬間だった。
「マティアスがあんな事を言うからフラグになっちゃうんでしょう?」
この時2人の周りには、質より量と言わんばかりの集団が襲いかかりつつあった。
ただ幸いだったのは、そのすべてが小型のドラゴン種であった事で、それらは【血抜き】や【真空】で次々と屠られていった。
「あのレッサーブルードラゴンは、古文書にのっていた希少薬の素材になるのよ!
マティアス!最優先で収納して!」
しっかりと素材用と食用を分けているオフェーリアだ。
「やっぱりドラゴンと言えばステーキよね!?」
いつものように結界で囲まれたウッドハウスと天幕の外、テーブルクロスがかけられた食卓に、尾の部位の肉がステーキとなって鎮座している。
「そちらの大皿はマティアスの分よ。
私はこちらの小さいので充分」
大皿のステーキは血が滴るようなレア。対してオフェーリアの方はしっかりと火が通されている。
そのドラゴン肉にナイフを入れ、一口大にカットした肉を口にする。
「柔らかい……
そしてジューシーね。
今まで食べてこなかったわけではないけど、これほどではなかったわ」
「そいつはひょっとしたら、紛い物の肉かもしれないな」
「紛い物?」
「そう、何とかドラゴンって名が付いていても、厳密に分類するとトカゲだったりとか」
「ああ!なるほど!」
そう言われてみれば、何となく思い当たるふしがある。
王都のあのレストラン、今度行ったら締めあげてやると誓った。