『ロック鳥のから揚げ』
ウッドハウスのキッチンで、鼻歌まじりで調理しているフェリア。
もちろん今夜のメインはロック鳥のから揚げだ。
何しろ未知の肉なのて、今回は生姜を多い目に使っている。
オフェーリアは調味液に、カットしたロック鳥の肉をどんどん漬け込んでいく。
そんなボウルが3個、味を染み込ませるためにしばらく置いておき、その間に付け合わせの生野菜をきざんでいく。
今日はクレープに似た薄パンを添えて、から揚げと野菜を巻いて食べられるようにした。
「ふふふ……
でもきっとマティアスはから揚げだけを食べ続けるんだろうな。
よく冷えたエールを用意しなきゃ」
そして思いつきでポテトも揚げ、ウインナーもボイルする。
「これほどの量を揚げたのは久しぶりよ」
さあ、召し上がれ。と積み上げられたから揚げの山。
それがまだ2つ、アイテムバッグの中にあると言う。
マティアスは口内に溢れる唾を飲み込みながら、フォークを手にした。
ロック鳥のから揚げ、それをゆっくりと齧ってみる。
すると溢れる肉汁。
「熱いから気をつけて」
オフェーリアの忠告はサラッと無視されだが、決して猫舌ではないマティアスは平気で咀嚼している。
そして満面の笑みを浮かべていた。
「これ、凄く美味い。
いつも食べるコカトリスよりも歯応えがあるが、俺はこっちの方が好きだな。
何よりも旨味がすごいよ。
それにこの味付け!
ピリッと生姜が効いていて、堪らんわ」
「うん、生姜には醤が合うからね。
奮発しちゃった」
醤とは大陸と海を隔てた島国で作られている調味料で、かなり高価なものだ。
マティアスもオフェーリアの作る料理の他には味わったことがない。
「醤とおサケと生姜がメインの味付けなの。
あと、隠し味に蜂蜜と胡椒を使っているのよ。どう?」
「何か俺、ものすごく贅沢なものを食ってる気がする」
「うんうん、感心なマティアスにはこれもあげちゃう」
アイテムバッグから取り出された大ジョッキにはキンキンに冷えたエールが!
その時結界内には、マティアスの歓喜の雄叫びが響き渡った。