『クッキングタイム』
このリス型魔獣の主食は木の実である。
実りの季節に溜め込んだ木の実をそのほかの季節に消費し、春は新芽や花、そして花粉なども食して生きている。
なのでこの角リスの肉は非常に美味で、何とも言えない旨味がある一級品の食材だった。
「マティアスの敵討ちに狩り尽くしてやる」
目の据わったオフェーリアに、思わずツッコミを入れてしまいそうになるマティアスだ。
彼はその胸の内で、今のオフェーリアの本音はリス肉の確保だと確信していた。
防御の魔導具を発動させ、時々ミストを発生させながら森の中を歩いていると、様々な魔獣と遭遇する。
やはり一番多いのはウルフ系だが、樹上から降ってくる蛇系やその被膜が刃と化したムササビなど警戒を怠れない場所だ。
そんな中でやはり極め付けは、視認できない角リスで、魔獣としてはまったく大した事がないのに危険な存在だった。
だがオフェーリアにとっては美味な食材であって、獲る気満々である。
「ぬぬ……
この先の木立に3匹、おそらくリスがいる」
もう少し近づくと向こうの方から飛び出して来てくれる食材。
視認できないのがたまにきずである。
【探査】して【ミスト】、位置を確認して【血抜き】もはや作業である。
角リスは命を失った途端姿を現し、バタバタと落ちて地面に散らばっている。
今はマティアスが回収係となって、その場で角と本体を分け、アイテムバッグに保存していった。
「まずはシンプルに串焼きよ!」
タレに漬け込んだ一口大に切った肉を串に刺し、焼いていく。
オーブンでジューシーに焼き上がった串焼きをマティアスの前に置いた。
「うん、これは美味い。
独特の旨味が堪らんな」
「でしょ?
これはたぶん、このリスが食べているエサによるものだと思うのよ」
コンロでは赤ワイン煮が煮込まれていた。